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初心者向け!デザイナーが触れる近代美術@吉野石膏コレクション展レポート

こんにちは。去年の11月に入社したグノシー事業部デザイナーの坂本です。丸の内にある三菱一号館美術館で開催されていた「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション展」に、デザインメンバーと行って来たので、そちらのレポートをお届けします!

はじめに

デザイナーも知っておきたい近代美術

今回、なぜ展覧会のレポートを書いているのか、という話からになりますが、Gunosyではこういったインプットしたい展覧会やイベントには会社が積極的に支援してくれる、という風土があり、デザインチームでもこの展覧会に行きたい!という声があがり参加が決まりました。

今回のテーマは「美術」。

デザインは応用美術と言われるくらい、あらゆる商品やサービスと密接な関係にありますが、その美術に関して、私はまったくの初心者で今まで美術の展覧会に行ったのも大昔に数回。

そういったこともあり、今後デザイナーとしてスキルアップしていく上でもいい機会と思い参加しました。

得られたこと

美術館に行くことでインスピレーションを受けてスキルアップに繋ぐことができたらいいな、という気持ちでしたが、予想外に多くのことを学べました。ざっくり説明するとこちらの3点です。

  • 作品の配色や時代背景から「ストーリーや共感」を得られる
  • ストレスなく見せるために配慮した「美術館の導線設計」が素晴らしい
  • 音声ガイドで時代背景や画家の半生を知り、「美術の楽しみ方」を知った

私も初心者なので、専門的な解説はできませんが、デザイナーとしても大変満足度の高い展覧会でしたので、紹介したいと思います。

吉野石膏コレクション展とは?

日本で初めて本格的に紹介!近代美術コレクション

今回展覧した「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション展」は、建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社が長い時間をかけて集めたコレクションのうち、近代美術の油彩68点、パステル4点の計72点をじっくり堪能することができる展覧会になります。

国内でまとまって紹介されてこなかったコレクションを、日本で初めて本格的に展覧するので、とても貴重な機会だったといえます!

会場の雰囲気や所要時間目安

東京駅から5分ほど歩いた先にある三菱一号館美術館。もともとは明治に建設されたもので、一度は老朽化のため解体されましたが、2009年に美術館として復元したそうです。

写真に映っていませんが、入り口の前に小さな庭もあり風情がありました。

見て回る時間としては、会場自体がコンパクトにまとまっていましたので、1時間〜1時間30分ほどですべての作品を見ることが出来ました。

音声ガイドを聞きながらだったので、早い方は1時間以内に終わるかもしれません。

それでは、ここから展示の流れと主な作品などを見ていきたいと思います。

展示の流れと主な作品

印象派、誕生(モネ、ルノワール、マネ、ミレーなど)

印象派とは、19世紀後半にフランスのパリを中心に広まったもので、作品の主な特徴として光の輝きや空気感など一瞬の印象を表現し、鮮やかな色彩と自由なタッチで、写真に出来ない風景を描こうとした作品が多いことがあげられます。

クロード・モネ『睡蓮』

印象派の作品はルノワール、マネ、ミレーなど、数多くの作品が並んでいましたが、写真はクロード・モネの『睡蓮(すいれん)』。写真撮影可能な場所にも飾ってありましたので一枚とってきました。

Webデザイナー目線で言うと、水面に映る空の「青」をベースカラーに、睡蓮の葉の「緑」がメインカラー、睡蓮の「黄」や「赤」はアクセントカラーを用いて、配色の割合は 6:3:1の法則が自然と形成され、比較的淡い色合いのトーンで統一された作品、といったところでしょうか。
筆跡が特徴的なモネですが、この荒々しい質感が画家のこだわりを感じさせます。

芸術に対してベースカラーや◯◯の法則が〜なんて言うと野暮ったい気がしますが、細かく見ていくと色のバランスや目に入る情報量が洗練された上質な作品であることが分かります。

フォーヴから抽象へ(ピカソ、ルソー、カンディンスキーなど)

印象派が形成されたのち、細部の描写を簡略し激しい色彩を特徴とする「フォーヴィスム」や、「キュビズム」というピカソをはじめとした絵画の形態を破壊する抽象絵が生まれた時代へと移っていきます。

カンディンスキー 『適度なバリエーション』
出典:エンタメ特化型情報メディア スパイス

写真はカンディンスキー 『適度なバリエーション』です。カンディンスキーのこの作品や「結びつける緑」という作品は、デザイナー陣の中でも前衛的で配色もオシャレ、と絶賛されていました。

ピカソ同様、こういった抽象絵画の配色や構成は人を惹きつけるものがあると思うので参考にしたいですね。

エコール・ド・パリ(シャガール、ユトリロなど)

エコール・ド・パリ(パリ派)は、1920年代を中心に、当時パリに滞在していた外国人美術家の総称として使われています。シャガール、モディリアーニ、ユトリロがその代表格で、具象的でありながら個性的かつ魅力的な作品を多く残しています。

マルク・シャガール 『夢』
出典:三越 日本橋本店

その中でも印象に残ったのがこのマルク・シャガールの『夢』という作品です。

シャガールは第二次世界大戦の勃発を受け、アメリカへの亡命の道を選びましたが、亡命後、すぐにシャガールの妻ベラの死という悲劇に直面し、その後にこの作品が完成したと言われています。

誰もいない暗い部屋で一人佇む男性と、白い花嫁衣裳の女性のコントラストが、この絵のストーリーをより一層深め、見ている人の印象に残るのではないかと思います。

デザイナーの目線で感じたこと

音声ガイド(梅原 裕一郎さん)によるUI/UX

展覧するにあたって、受付で音声ガイドをレンタルしました。お一人様1台550円。

作品のすぐ横に「音声アイコンと数字」があり、対応する数字のボタンを押すとガイダンスが流れる仕様です。

ちなみに、ガイドには声優の梅原裕一郎さんが担当されています。

初めて使いましたが、時代背景や画家たちの半生を分かりやすく簡潔に伝えてくれており、この音声ガイドが今回の展覧会を楽しめた要因のひとつだと思っています。

特に、上で書いたシャガールの時代背景や奥さんとの話は、実は音声ガイドで知ったこともあり、その背景を知ったうえで、シャガールのその他の作品を見るとまた違った感じ方ができたので、これは素晴らしいユーザー体験だ感激しました。

もちろん事前に画家のことを知っていれば使う必要はないのですが、初心者が美術館で鑑賞する際は、一度この音声ガイドをぜひ試してみてください!

配色やストーリーの見せ方

数多くの作品を見て言えることは、配色やコントラスト、そして何より絵画から読み取れるストーリーが秀逸だということです。

Webやアプリのサービスでもストーリーを意識したブランディングが重要とよく言われていますが、これらの絵画からもその重要性は読み取れます。

今回は音声ガイドに頼りましたが、画家の半生や時代背景(ストーリー)などがあればより深く画家のことを知りたくなる感覚を覚えたので、ストーリーと共感は、ファンを生み、ブランドを作ることができる重要な要因だと実感しました。

そう考えると、画家はそれを一枚の絵で表現しているので、その難しさは計り知れないですね。(私はストーリーをテキストでばんっと書きたくなります)

展示の配置や導線設計の工夫

会場は受付が1階で、作品が置いてあるのは2階と3階という構成になっていました。

1階での受付後、最初にエレベーターで3階に案内されたとき、「2階から見ないのかな?」と思いましたが、よく考えれば確かに3階→2階→1階と上の階から見ていくほうが合理的ですね。

3階からはエレベーターを使わず、矢印にしたがい階段で降りる形でしたが、登ってくるお客さんがいないので、狭い通路でもぶつかる心配もなく、子供連れの方も安心して楽しむことができたんじゃないかなと感じました。

こういった導線設計を含めたユーザー体験への工夫は、大変勉強になりました。

おわりに

最初に目的と感想を書いていたので、おさらいになってしまいますが、デザイナー目線で今回得られた経験をざっくり書くと、

  • 作品の配色や背景などが、ストーリーや共感を呼び「ブランディング」になっていく
  • 絵画をストレスなく見せるために配慮した「美術館の導線設計」が素晴らしい
  • 音声ガイドで時代背景や画家の半生を知り、「美術の楽しみ方」を知った

まだまだ初心者なので、一度の展覧会で分かったつもりになるのも危険ですが、今回得た経験はとても大きなものだと思っています。

今、何気なく使っているデザインのルーツは美術からの応用だった、なんてこともあるかもしれないので、今後も美術だけでなく様々なものに触れ、仕事に活かしていきたいと思います。