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Gunosy広告技術部を支えるKPI用語集

はじめに

 こんにちは、広告技術部アルバイトの徐( @joha__rb )です。普段の業務では、広告配信の管理画面システムの開発をしております。

 さて、皆さん普段お仕事をされる上で「KPI」という単語を使われたことはありますか? KPIとはKey Performance Indicatorの略語であり、日本語訳すると重要業績評価指標。一般的に、企業や組織での目標の達成度を評価するための指標を意味します。達成度が一目でわかるようにKPIは数値で設定され、組織の誰でもその数値をみれば自分達の進捗がわかるようになっています。

 Gunosyでは「数値は神より正しい」をモットーに、日々KPIの数値を追っています。今回は中でも、Gunosy広告技術部でのKPIの利用方法をご紹介しよう思います。

Gunosy広告技術部のKPI

広告技術部とは

 そもそも皆さんは、広告技術部と聞いてもピンとこない方も多いのではないのでしょうか? そこでKPIのお話をする前に、Gunosy広告技術部という部署についてさらっとご紹介したいと思います。

 広告技術部とはその名の通り、広告に関する開発をメインで行う部署です。例えば、弊社アプリ(グノシー ・LUCRA・ニュースパス)やアドネットワークに広告を配信するためのロジックの開発や、広告を入稿するための管理画面システムの開発等を行っています。Gunosyは基本的に広告収入によって収益を得ているので、重要な役割を担っていると言えます。

 また管理画面システムに興味がある方はぜひ、こちらの記事もご覧ください! tech.gunosy.io

広告技術部のKPI

 Gunosyでは部署によって、様々な数値をKPIとして設定しています。例えばアプリの開発を行うサービス開発部では、アプリ利用率を指すDAU(Daily Active User)をKPIとして追っています。また営業部では、アプリやアドネットワークに配信する広告の獲得のために営業し、広告売上を指すSalesの数値を追っています。

 では広告技術部では、いったいどのような数値をKPIとして設定しているのでしょうか? 先ほどの通り、広告収入はGunosyの企業としての利益そのものです。そのため広告技術部では、広告技術の開発によって一つひとつの広告売上をできる限り最大化すること、つまり「広告の収益性」を高めることを目標にしています。

 広告技術部では、収益性を数値化する指標として「Sales / DAU」をKPIに設定しています。Salesは広告による売上そのものを指し、DAUはアプリを利用した1日のユーザー数のことを指します。KPIである「Sales / DAU」とはつまり「広告による売上 / ユーザー数」のことで、ユーザ一人当たりの売上で広告収益性を数値化しています。

 ちなみに次の記事では、Gunosyデータ分析部でのKPI管理方法が紹介されていますので、興味のある方はぜひお読みください! data.gunosy.io

広告の入札形式ごとにSalesを分解する

 では次に、KPIのうち広告そのものに関係するSalesをより細かく分解していきます。インターネット広告はその種類ごとに入札形式*1が異なり、さらに入札形式によってSalesの分解方法も変わります。そこでまず、インターネット広告の予約型広告・運用型広告・成果報酬型広告についてご紹介します。

 予約型広告とは、掲載期間や掲載料があらかじめ決まっている広告です。とにかく宣伝して、不特定多数の人に知らせるために使われます。例えば新商品やキャンペーンなど、とにかく多くの人に認知させたいものに利用されます。

 運用型広告とは、広告が実際に人々に見られた回数やクリック数などを確認しながら、掲載期間や掲載料を更新する(運用する)広告を指します。広告内容の認知度を数値として随時計測することができ、より効果的な広告を出すことができます。

 成果報酬型広告とは文字通り、広告で達成した成果に応じて掲載料を支払う広告です。例えば、掲載した広告商品が購入された数やアプリのダウンロード数など、広告による成果数に応じて掲載料が支払われます。成果のことはよく、獲得と呼ぶことが多いです。

 広告の種類によってそれぞれ、入札形式やKPIの数値が異なります。しかも入札形式と広告の種類は一対一に対応しておらず、同じ種類の広告でも複数の入札方式がある場合もあります。ここでは広告の入札方式ごとに、Salesの分解方式や利用される広告の種類を紹介していきたいと思います。

CPM入札(Impression)

 広告の入札形式の1つに、CPM(Cost per Impression)入札というものがあります。CPM入札ではImpression(以下Impと表記)あたりの金額であるCPMを設定して、広告を入札します。Impとはユーザーによる広告の表示回数を意味し、広告の認知度を数値化するために使われます。

 CPMはImp(広告表示)あたりの売上を意味し、「Sales / Imp」で求められます。CPMが高ければ高いほど広告収益性も高いことを意味するので、CPM入札の広告はKPIをそのままCPMで設定しています。また、1Impあたりの売上では数値がとても小さくなってしまうので、わかりやすさのためにCPMは1000Impあたりの売上(Sales / Imp × 1000)の数値を設定しています。CPMのMilleとは、1000を意味します。

 CPM入札は主に予約型広告運用型広告で利用されます。

CPC入札(Click と CTR)

 また、CPC(Cost per Click)入札という形式もあります。CPC入札ではClickあたりの金額のCPCを設定して、広告を入札します。Clickとはユーザーによる広告のクリック数を意味し、広告の認知・理解度を数値化するために使われます。

 CPC入札ではあらかじめCPCを決めて入札するので、最終的な売上のSales(CPC × Click)はClickの回数によって増減します。よってCPC入札では広告収益性をClick数で追っています。そのKPIとして、CTR(Click Through Rate)というものがあります。CTRとは、広告が表示された回数(Imp)あたりのクリック数(Click)の割合を意味し、日本語では「クリック率」と言います。よって、CPC入札の広告ではCTRが高ければ高いほど、広告収益性が高いと言えます。

 CPC入札は主に、運用型広告で利用されます。

CPA入札(Conversion と CVR)

 また別の広告入札形式として、CPA(Cost per Acquisition)入札というものがあります。AcquisitionはConversionの言い換えで日本語で「獲得」を意味し、CPA入札ではConversion(以下CVと表記)あたりの金額のCPAを設定して、広告を入札します。CVとは商品購入やアプリダウンロードなど広告の目的となるアクションのことを指し、広告の達成率(獲得数)を数値化します。

 CPA入札でもあらかじめCPAを決めて入札するので、最終的な売上のSales(CPA × CV)は、CV数によって増減します。よってCPA入札の広告では収益性を、CVの回数で追っています。またそのKPIとして、CVR(Conversion Rate)があります。CVRとはクリックされた広告(Click)のうち獲得された数(CV)の割合を意味し、日本語でもそのまま「コンバージョン率」と言います。ですので、CPA入札の広告ではCVRが高いほど、広告収益性が高いと言えます。

 CPA入札は、成果報酬型広告で利用されます。

入札形式ごとのKPIと計算式

広告の入札形式 単価 Salesに影響するKPI 計算式
CPM入札 CPM(Cost per Mille) CPM CPM = Sales / Imp × 1000
CPC入札 CPC(Cost per Click) CTR(Click through Rate) CPC = Sales / Click
CTR = Click / Imp
CPA入札 CPA(Cost per Acquisition) CVR(Conversion Rate) CPA = Sales / CV
CVR = CV / Click

eCPMとは?

 上記に挙げた「CPM・CTR・CVR」の3つが、インターネット広告において一般的に使われるKPIとなります。しかしこれらのKPIは広告の種類ごとに異なってしまい、簡単には理解しづらいです。KPIの定義である「一目見れば誰でも、進捗がすぐにわかる数値」としては、いささか使うのが難しいですね。

 そこでGunosyで追っているKPIとして、eCPM(Effective Cost per Mille)というものがあります。eCPMとは「全ての広告で、売上実績からImpあたりの単価を逆算した数値」です。ユーザーは最初に必ず広告を認知(Imp)し、CTRやCVRもImp回数を元に計算しているので、どの種類の広告であってもeCPMをKPIに収益性を測ることができます。

 ちなみにeCPMは日本語でいうと「有効インプレッション単価」を意味します。そこで言葉の意味から「ClickやCVに対応する ”有効な” Impを用いて計算した、広告収益の指標」がeCPMであると考えると、少し理解しやすいかと思います。

広告の入札形式 もとのKPI eCPMに換算する計算式
CPM入札 CPM eCPM = CPM
CPC入札 CPC eCPM = CPC × (1000 × CTR)*2
CPA入札 CPA eCPM = CPA × (1000 × CTR × CVR )*3

Gunosy広告技術部でのKPI用語の使われ方

 さて、ここまでインターネット広告でよく用いられるKPI用語について解説してきました。次に、Gunosy広告技術部で実際にどのようにKPIを利用しているか、ご紹介していきたいと思います。

CTR・CVR改善によるSalesの向上 

 広告技術部では、広告配信ロジックの開発を行っています。ここでのロジックとは、適切な広告を適切なユーザーに届けることを意味します。例えばグノシーでは閲覧記事からユーザーの年齢・性別を推定し、女性にはコスメやカフェなどの広告を優先して配信するようにします。

 こうしてロジックを改善し、ユーザーがよりクリック・コンバージョンするような広告を配信することで、CTR・CVRを向上させることができます。それにより大元のKPIのSalesの数値を向上をさせることができます。

Impの増加

 広告配信ロジックの開発ではさらに、アプリ内での広告の表示回数も調整しています。広告が表示される回数が増えればその分、ユーザーが広告を目にする回数も増えるのでImp量は増加します。

 また、広告にはバナー広告*4やインフィード広告*5、動画広告に記事広告…と様々な種類の広告が存在します。広告の種類それぞれに対して、配信量を調整しながらImp量を増やすことを目標としています。

DAUとのバランス

 広告の配信量はただ多くすればいいというわけではありません。なぜなら広告を増やしすぎると今度は、ユーザーがアプリを利用しなくなってしまい、DAUの値にマイナスな影響を与えてしまうからです。したがって広告技術部では、ユーザーが快適にアプリを使えるようにしつつも広告表示回数を増やせるよう、絶妙なバランスを目指して開発を行っています。

最後に

 以上がインターネット広告におけるKPI用語の解説と、Gunosy広告技術部での使い方の紹介になります。実は今回、KPI用語として紹介しきれなかったものもたくさんあります(DAUとAdDAUの違い、DAUとRRの関係性、etc…)。検索するとすぐに出てくるので、気になった方はぜひ調べてみてください。インターネット広告は本当に奥が深く、私もまだまだ勉強することばかりです。

 また広告技術部に限らず、Gunosyでは共に世の中の課題を解決していけるエンジニアを募集しています。サーバサイド / iOS / Android など全方位的に募集していますので、ご興味のある方のご応募をお待ちしております!

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ご紹介した記事

*1:広告の入稿には、配信枠を入札する必要があります。入札の価格によって、広告の表示回数や優先順序などが変わります。

*2: (1000 × CTR)は1000ImpあたりClickされた回数。つまり「eCPM = Click単価 × 1000ImpあたりのClick数」で求められる

*3: (1000 × CTR × CVR )は1000ImpあたりCVされた回数。つまり「eCPM = CV単価 × 1000ImpあたりのCV数」で求められる

*4: 画像やGIFなどで表示される形式の広告のこと。クリックすると広告主のWebサイトに飛ばされる

*5:コンテンツの間に表示される形式の広告のこと。Gunosyでいうと記事一覧に表示されているものなど