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スプリントの振り返りでKPTをやめた話

本記事は、Gunosy Advent Calendar 2020 23日目の記事です。

Miroで作ったKPTボード

こんにちは。広告技術部の石田です。

みなさんはスプリントの振り返りでKPTをやっていますか? KPTで話が脱線して時間が長引くうちにKPTで話すこと自体がつらくなるKPT疲れを起こしていませんか?

そんなKPT疲れから抜け出すために私たちはこの一年間でKPTで振り返りをすることをやめました。

この記事ではKPTをなぜやめたのか・やめてどうなったかを紹介します。

KPTがプロブレム大会になる

私たちのチームでは週に一回会議室を90分押さえてKPTとスプリント計画を行っていました。

四年前に振り返りでKPTをやり始めた頃はそれほどP(プロブレム)の数も多くなかったのですが、次第にプロブレムを話す時間が90分のうちの50分、60分、70分と長くなり、それに伴いスプリント計画に回す時間も減っていきました。

場合によってはKPTだけで会議室の予約時間をすべて使い果たし、全員休憩スペースへ移ってスプリント計画を急いで済ませる事態まで発生しました。

スプリント計画に十分な時間を割けないのは大きな損失であり、私たちはこれを見過ごせなくなっていました。

なぜプロブレムの話が長引くのか?

プロブレムの話がどうして長引くかを考えてみると、だいたい3つの理由がありました。

問題点を特定しない

まず、プロブレムといいつつ、問題点を特定せずにただ起きたことを話してしまうことが挙げられます。

例えば、ひとくちに「ステージング環境のブランチ運用でQAチームが混乱した」といっても、それがブランチ運用の欠陥なのかステージング環境をQAチームと共用することによる問題なのか、QAチームとの情報共有が問題なのか色々と原因は考えられるでしょう。

論点を絞らずにプロブレムを話すとそれだけ時間がかかります。

解決できない問題

これもよくあることですが、解決できない話をプロブレムに上げてしまうことがあります。

例えば「リモート勤務中に部屋の近くで工事をしていてうるさい」といった出来事はおそらく解決できません。

工事をやめさせることもできないので、その人が静かな場所へ移って仕事をするくらいしか対策がないでしょう。

また、「誰々さんが辞めてしまった」といった、すでに取り返しのきかない出来事もKPTで話すには遅すぎる話題でしょう。

こうした話に時間を割くほどKPTの時間は長引いていきます。

人の責任に話が向いてしまう

プロブレムが話しづらいのは人の責任に話が向いてしまうことにも原因があります。

悪い事象を語るときは誰しも「自分は悪くない・悪いのは他人だ」という見方をするものです。

言う側も聞く側も自分が責められたくない気持ちが働いて問題の原因認定をしづらくなり、曖昧な話に終始することも多いでしょう。

そうした一面もKPTに時間がかかる要因と言えます。

このように、KPTにはプロブレムの話を終わらなくさせる罠が多いのです。

KPTをやめたらどうなったか?

このため、私たちのチームではスプリント振り返りにKPTをやるのをやめて、Fun・Done・Learnに替えました。

すると、プロブレムの話をしなくなったので短時間で振り返りを済ませ、そのぶんスプリント計画に時間を割くことが可能になりました。

冒頭に述べましたが、以前はKPTだけで会議室の予約時間をすべて使い果たすことさえあったので、KPTをやめた効果は絶大でした。

プロブレムはSlackで随時言うようになった

単純にKPTをやめたら本当の問題を話す機会がなくなるのではないかと懸念を持たれるかもしれませんが、そういうものは社内の公開Slack部屋で話し合うようになりました。

ただし、伝えるべきことを整理してチャットに投稿するのは思ったより難しく、最初からオープンな議論が盛んだったわけではなく、時間をかけて次第にできるようになったというのが実態です。

また、テキストだけでアイデアを共有することは難しいのでオンラインホワイトボードのMiroというツールを使って絵や図を交えてコミュニケーションを図る試みも採り入れました。

このようにチャットでのコミュニケーションにはそれなりに気をつかいますが、話した内容がテキストや図で記録に残ると過去の議論の積み重ねが容易になったので、結果として良くなったというのが率直な感想です。

文字でやりづらいときはオンラインミーティングで手短に話し合うようになった

さらに、文字ではうまく認識合わせができないときや、急いで方針を決めたいときはGoogleハングアウトやSlackのコールを使って手短にオンラインミーティングを行うようになりました。

週に一度の定例ミーティングの時間に一生懸命過去の記憶を掘り起こしてプロブレムを話し合うよりも、問題が発生したときに対応方針を決めてしまう方が無駄も省けます。

まとめ

KPTはよく知られた振り返り手法ですが、運用が難しいのも確かなので、KPTのやり方に苦労して大幅な時間を費やすのであれば、思い切って他の方法に改めるのも一案でしょう。