こんにちは。 Gunosy で iOS アプリ開発している小野です。 try! Swift Tokyo 2025に参加してきたのでレポートを書きます。
はじめに
try! Swift Tokyo は Swift をはじめとする iOS アプリ開発などを取り扱う技術カンファレンスです。今回は立川ステージガーデンにて 2025 年 4 月 9 日 ( 水 ) ~ 4 月 11 日 ( 金 ) に開催されました。 try! Swift Tokyo
私は今回、初めて try! Swift に参加しました。 技術カンファレンスへのオフライン参加自体も初めてだったため、すべてが貴重な体験となりました。 新しい技術や、自分の知らない領域について学べることを期待して参加しました。 また、イベントの雰囲気や、どのような方々が参加されているのかを知るのも楽しみの一つでした。 Gunosy の iOS メンバーである 吉岡 さんと plusnine さんと一緒に参加しました。
try! Swift の雰囲気
会場で一番印象的だったのは、そのグローバルな雰囲気でした。海外からの参加者が多く、会場のあちこちで英語が飛び交っていました。トークで使用される言語も英語が大半を占めており、まるで海外にいるかのような感覚になりました。 英語でのトークが中心で、英語が得意でない方は内容が理解できないのではと思いましたが、トランシーバーによる同時通訳が用意されており、日本語で内容を理解することができました。 また、今回から新たな試みとして、try! Swift の公式アプリに AI を活用したリアルタイム通訳機能が追加されていました。フリットジャパン株式会社が開発した Flitto によって、トークの英語が次々と正確に翻訳され、非常に分かりやすかったです。さらに、聞き逃した内容を後から振り返って確認できる点が特に便利だと感じました。 英語が苦手な方でもカンファレンスを十分に楽しめる環境を整えていただき、本当に感謝しております!
小野が気になったトーク
Swift × Android: Skipが切り拓くクロスプラットフォーム開発の未来 by yamaken
Swift を使って iOS と Android のアプリ開発が可能なクロスプラットフォームフレームワーク 「 Skip 」 についての内容です。 2024 年 8 月にリリースされた新しい技術で、実際に使用した体験をもとに紹介されています。
主に以下の 3 点について説明されました。
- Android の UI について
- Skip は Transpiled Mode か Native Mode か
- 既存アプリの移植が可能かどうか
Android の UI は期待通りに動作し、特別な調整は不要とのことでした。 UI に関して OS 差分を気にする必要がなく開発しやすいと感じました。 ただし、ナビゲーションバーのような独自 API には注意が必要で、 SwiftUI と Jetpack Compose の仕様の違いを理解しておく必要があるとのことでした。
既存アプリの移植は不可能ではありませんが、現時点では厳しい挑戦となるようです。 UIImage などの iOS 特有の API は Android では対応していないため、大量の Android コードを記述する必要があるようです。 それでも、最近では Skip が Android 用にもコンパイル可能になり、 API サポートも徐々に拡大しているという嬉しい進展がありました。 完全なAPIカバレッジが実現すれば、既存アプリの移植も容易になり、 Swift で両 OS を開発できる未来が期待できそうです。 Skip の可能性に大きな期待を感じるトークでした。 Skip の存在は知っていましたが、実際に触れたことがなかったので、この機会に試してみようと思います。
plusnineが気になったトーク
Swiftコード生成の可能性を解き放て by rockname
Java ではお馴染みのアノテーション(@Inject等)を用いたコード生成の仕組みを、 Swift で実現する方法についての内容でした。
主にスピーカーの rockname さん自作の DI ライブラリSwordでの実装例を元に、
- Define Macro
- Configure Plugin
- Parse
- Validate
- Generate Code
の5ステップに分けて、各々のステップでの具体的な実装について解説されました。 個人的には特に、 BuildToolPlugin を利用したビルドプロセスへの組み込み部分の解説がかなり実用的で参考になりました。 加えて、 SwiftParser を利用しての抽象構文木(AST)の構築と要素に対する走査・アクセスの方法についての話もあり、 この辺りも自身で内製ライブラリを作る場合に色々内容を参考にできそうです。
吉岡が気になったトーク
SwiftUI Textを使った特殊効果 by Paul Hudson
iOS 18 から利用できるようになった SwiftUI の Text Renderer という機能を利用して、テキスト描画をカスタマイズする内容でした。テキスト描画の単位であるLine、Run、Glyphの説明から始まり、文字の形状変化、塗りつぶしの変更、ピクセルシェーダーによる多彩な表現が紹介されました。
題材に 1990 年代風のデザインが使われていたのも面白く、文字描画を自前で処理してカスタムするテクニック自体もとても興味深かったです。SwiftUI の中でシェーダーを使えるというのも新鮮で、一度試してみたくなる内容でした。
たとえば、アプリの初回起動時のチュートリアルなど、視覚的に目を引かせたい場面で活用できそうだと感じました。
try! Swift を通して得たもの
try! Swift では、トークの合間にスポンサーブースを回ったり、技術者同士で会話する時間がありました。
スポンサーブースでは、スポンサー企業が採用している技術や開発環境について説明を受けました。また、アンケートやクイズに答えるなど、楽しいイベントもたくさん用意されていました。特に、開発環境の説明の中で Kotlin Multiplatform( KMP )を採用している事例が多く見られ、その導入経緯や成果について話を聞くことができました。これをきっかけに、自社でも KMP の導入を検討してみても良いのではないかという話が出ました。
また、トークで紹介された Apple Vision Pro を使ったサッカー J1 リーグ所属 FC 町田ゼルビアの Immersive Video を実際にブースで体験する機会もあり、とても貴重な経験となりました。
さらに、 2 日目の夜には運営主催の BBQ が開催され、他の参加者と交流する機会もありました。各企業の技術や開発内容について話したり、Swift を趣味として楽しんでいる全く別の職業の方と話したりと、多種多様な方々と交流することができました。 こうしたリアルな体験ができるのは、オフラインイベントならではの魅力だと感じました。


イベントを終えて
try! Swift Tokyo 2025 を通じて、これほど多くの人が iOS 開発に携わっていることを改めて実感しました。 技術に対してもっと貪欲になり、さらに努力しようと思える良いきっかけとなりました。 また、英語でトークを行う日本の方々を見て、自分も英語力を伸ばしていく必要性を強く感じました。
最後に、try! Swift Tokyo に関わるすべての方々、そして参加を支援してくださった会社に心から感謝を込めて、このブログ記事を締めくくらせていただきます。
